本稿を終えるに際して、室町時代中期に渡来した押して使う取手付き台鉋が、なぜ日本において取手が消え、引いて使う台鉋になったのか、また鉋使用姿勢が坐位から立位に、いつ頃そしてなぜ変化したのかについて、簡単に述べて置きましょう。
押し鉋が渡来してから、ほどなくして引き鉋も作られたようですが、絵画などの資料から江戸時代初期まで「押し」「引き」両方で台鉋が使われ、江戸時代中期頃からは「引き削り」にほとんどなって行ったようです。
次に鉋使用姿勢の変化ですが、19世紀始め頃までの木工職人を描いた絵画では坐位での鉋削りです。それ以降の絵画では、立位での鉋削りが多く描かれるようになります。坐位から立位への変化の大きな理由は、建築の作業能率を向上させることから生じたものと言えるのではないでしょうか。
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