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(一)千代鶴是秀の曾祖父と祖父と父



 千代鶴是秀(本名 加藤廣)は、明治7年7月31日東京の麻布に生まれ、昭和32年10月2日に目黒区宿山の自宅において、清貧に徹した82歳の生涯を終えました。鍛冶職としての約70年の生涯において、日本刀をはじめとして鉋・鑿・小刀・切り出し・玄能・鋏・鏝など多くの名品を千代鶴是秀の名前と共に残していきました。
また、墨跡にも大変優れた才能を発揮し、大工道具などに関する作品と共に墨跡作品も、業界人や愛好家はもとより、演劇・茶道関係などの人達に、いまでも大切に所蔵されています。
 
 千代鶴是秀の偉大な功績は、曇りのない澄んだ精神でただひたすらに全精魂を込めて槌打ち、大工道具や打刃物を単なる道具から、見事なほどに均整がとれて清らかな気品の漂う芸術作品までに高めたことにあるでしょう。昭和26年はいじめ、最高の栄誉のひとつである芸術院恩賜賞の候補に挙げられたこともありました。

しかし千代鶴是秀の生涯は、それらの作品からはとても想像もできないほどの厳しい風雪に晒され続けた生涯でありました。これから述べる千代鶴是秀の家系については、鈴木智雄作成の「千代鶴是秀の家系図」を見ますと、その複雑な繋がりがよく理解できますので参照して下さい。

           千代鶴是秀の家系図

 江戸時代の末期、「新新刀の祖」と呼ばれる刀鍛冶に水心子正秀がいました。正秀は江戸で優秀な刀鍛冶を幾人も育成していました。その門人の一人が千代鶴是秀の曾祖父・加藤和泉守国秀で、米沢藩上杉家の刀鍛冶でした。国秀の子に加藤八郎がいて、父の国秀と同様に正秀の下で刀鍛冶の修業をしたのち、独立して長運斎綱俊を名のり、米沢藩上杉家に仕えました。この綱俊が千代鶴是秀の祖父です。綱俊の兄に刀鍛冶の綱秀(綱英とも名のる)がいました。綱秀の子には、綱俊に弟子入りし、のちに幕末江戸において屈指の刀鍛冶の名工と言われた固山宗次がいました。綱俊には、このほかにも高橋長信、青龍軒盛俊らの優れた多くの門人を育成し、備前伝では水心子一門を凌ぐほどの勢力になって行きました。

 綱俊は正秀に学んだのち、大阪に行って鈴木治國に師事し、そしてさらに西国を遊歴したのち熊本で駐槌した経歴を持ち、文久3年(1863年)12月5日に66歳の生涯を江戸飯倉町上杉邸内石堂家において終えています。綱俊の刀鍛冶としてのランクは、新新刀上作に位置付けられ、かなりの名工として認められ、刻銘は
「於東都加藤綱俊造」や「羽州米沢藩住加藤綱俊」を切りました。

 綱俊には三男三女がいて、長男は米沢藩上杉家の刀鍛冶である西尾家に養子に入り、四代目西尾辰三郎となりますが、若くして亡くなりました。次男の助一郎は、弘化4年(1847年)11歳のとき、父・綱俊の弟子で刀匠として高名であった周防国岩国の青龍軒盛俊に入門しました。そこで助一郎は8年間修業をし、19歳になったときに江戸に戻り、それから以後は父・綱俊と一緒に刀を鍛え、綱俊の晩年は助一郎が父の代作を行いました。この助一郎が二代目長運斎綱俊(是俊とも名のる)で、千代鶴是秀の父であり、母キクは上杉家中の士分である斎藤弥次衛の三女でした。二代目綱俊は刻銘に「運壽是俊」や「長運斎綱俊造之」を切り、刀匠としのランクは新新刀中上作に位置付けられていました。

 初代綱俊は処世でも大変長けた人物でした。自分の姉の子である加藤政太郎が鍛冶に優れた才能があるのを知ると、長女のトヲの婿養子に迎え入れ、次いで武蔵大掾藤原是一に始まる刀匠としての名門である石堂家の家督を買い取り、形式の上において加藤政太郎を石堂重二郎の養子にさせて、七代目石堂運壽斎是一を名のらせました。この七代目石堂是一は二代目綱俊より17歳上で、江戸幕府の御用鍛冶師・下坂近次郎などに次ぐ幕府屈指の名工となり、刀匠としてのランクも新新刀上上作と極めて高く、刻銘は「石堂運壽斎是一精錬作」や「石堂藤原是一精錬」を切りました。
 しかし子ができなかったので、初代綱俊は三男の助太郎を養子にさせ、八代目石堂是一を名のらせました。八代目石堂是一は、綱秀や光一、秀一とも名のり、また「石堂運壽斎藤原壽永」とも刻銘を切りました。
二代目綱俊よりも3歳下でした。

江戸において、「綱俊、宗次、是一などの一門はいずれも備前伝に長じた幕末新新刀の良工である」と評価され、また明治6年(1873年)にはウィーンで開かれた万国博覧会に政府の選抜によって、七代目石堂是一、固山宗次、栗原信秀の三人が日本刀を出品し、刀匠としての栄誉を授けられ、まさにこの頃の綱俊一門は絶頂期にありました。

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