今回は、三条鋸鍛冶の名工と評された大場・山口・佐藤の3氏について語りました。今まで私はこの3氏についてはよく知りませんでしたので、本稿を書き上げることによって詳しく知り得ました。
どの分野でも、名人とか名工とか言われた人たちは、とかく貧乏と苦悩の生活を送ると言われますが、これは希有な才能を与えられた人の宿命とも言えましょう。彼らはどんなに貧乏しようとも、決して妥協せず、苦悩しながら更なる高みへと突き進んで行きます。たとえ報われなくとも、彼らの誇り高き心が許さないからです。そして、彼らを支えたのは妻であり、家族です。本稿で取り上げた3氏は、まさにこのような人たちであったと言えましょう。
本稿を終えるに当たり、佐藤長一郎氏の警鐘を込めた勇気ある発言について、少し語ってみましょう。
鋸業界の指導者の一人として、「1代で終わらざるを得ない」また「鋸の将来の不安」を引き起こした自責の念から、次の世代の鋸鍛冶たちに「このようにならないように、いつまでも同じではなく、新しく変化して行きなさい。」と託した伝言と解釈すべきでしょう。果たして、この伝言はその後の鋸鍛冶たちにどう受け止められたのでしょうか。
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