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《東京鉋鍛冶の達人「佐野勝二」》


佐野勝二 作 「兵部」鉋2


はじめに


 曾て東京に、「刃物は切れ味だけが勝負。飾ったってだめ。」と言って、名工たちの鉋を凌ぐ切れ味を誇った鉋鍛冶がいました。「兵部」銘で名が知れた佐野勝二氏です。佐野氏は、問屋銘の「国明」・「運慶」・「正俊」・「宝凰」・「天仙寿」、また「千代鶴」銘などでも鉋を鍛ち、これらの鉋はどれも大変良く切れて評判は高く、しかも手ごろな値段で、「板橋の佐野勝さん」の愛称で呼ばれていました。 

佐野勝二 作 「兵部」鉋3 この佐野勝二氏は、口が滅法悪く、職人として強烈な個性の持ち主でした。大工道具の権威者であった故村松貞次郎東大教授は、大学の研究室を訪れた佐野氏を見送って、暗い廊下を帰って行くその後ろ姿を、「小柄な身体で意気軒昴、右肩を極端に上げて、まるで偏屈が人間の形をして歩いている」ようで、思わず笑いを噴き出しそうになったと「続道具曼陀羅」のなかで表現しています。

 鉋台入職であった私の父が、佐野氏から何度か鉋刃を買うなどして顔見知りであったことから、佐野氏が晩年にひょっこり当店に寄ったことがありました。そのとき、ベランメー調でまくし立てる佐野氏の話をそばで聞いていて、今でも覚えている話が幾つかあります。

 「今の大工は鉋の使い方も知りゃしねえ。ダイクでなくダイロクだ」とか、「鉋を桐箱に入れて売ってるが、鉋がお棺に入っいちゃ、もう鉋も終わりだ」とか、「千代鶴のじいさん(千代鶴是秀のこと)と鉋の造り方についてちっと話すと、すぐにじいさんの弟子になったと言ってる奴がいるが、そんなこと言えば俺だって弟子だ」とかの話です。

佐野勝二 作 「兵部」鉋4

 また、佐野氏はお酒がたいへん大好きで、お酒に纏わる逸話もたくさん残っています。その一つに、新潟の問屋に鉋の代金を受け取りに行って、その晩に代金すべてを飲んでしまい、問屋に借金してまた東京に帰ってきたとか、とにかく佐野氏は破天荒な人でした。

 この佐野勝二氏について、インターネットで調べたり、関係者にお聞きしたり、また毎日新聞社発行の「続道具曼陀羅」(1978年)などで詳しく知ることができましたので当店所蔵の佐野氏の鍛った鉋や切り出しを写真紹介し、佐野氏の経歴について述べてみましょう。
以下、敬称を略させて戴きます。


東京鉋鍛冶の達人 「佐野勝二」 目次




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