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(二) 角柄の左官鏝の出現



 江戸時代後期になると、京都に中首で作られた左官鏝が出現します。それとともに京都において、日本で始めて角柄が付けられた中首鏝が誕生します。幕末の京都の鏝鍛冶であった雁金(かりがね)銘の角柄中首鏝や無名の角柄中首鏝が発見されています。これらの角柄の中首鏝は、どれも鏝が小さく、鏝首(鏝台と柄の間隔)が狭いと言う特徴があります。

 この角柄の誕生には、京壁塗りと中首鏝と鏝柄の三つが密接に関係しているように推察します。別の表現をすれば、京壁塗りが盛んな京都で中首鏝が出現したからこそ角柄が誕生したと言えましょう。


 その理由は、以下のように述べることができます。

(1) 京壁を塗る時に、元首鏝では力を入れ難くて使いづらく、中首鏝の方が力を入れ易い利点がある。

(2) 江戸時代の後半に京都で中首鏝が誕生したと推察される。

(3) 京壁を塗るときには、丸柄よりも角柄の方が使いやすい。
(※3参照)

(4) 鏝の柄は鏝鍛冶が付けるのではなく、直接鏝鍛冶から買った左官が自分で付けるか、あるいは大工・建具屋などに頼んで付けてもらっていたので、使い易いようにどのような形状にもすることができた。


※3 京都の名人左官職である奥田信雄氏によると、京壁を塗るときの丸柄と角柄の違いや角柄への移行を、次のように述べています。(月刊「さかん」2008年10月号/座談会「鏝は語る 江戸から現代まで」)

「丸柄というのは鷲づかみです。(注:参考までに、角柄は親指押さえで鏝を持ちます)その力を溜めるとか、ひじとか肩に力を溜める必要がなければ、丸い方が力が入りやすくて上出来やったと思う。そうっと持って力を溜めるようになってきてから、まず八角になってきます。」

「高度な仕事をしようとして、力を抜いてバランスよう鏝を握ろうとすると、だんだん角になっていったと思う。」

「大型の鏝は丸柄が多く、角柄はめずらしい。」


 以上のような理由から、京都において初めて角柄の鏝が誕生したと推察します。そして、京都の左官が地方に出掛けて仕事をしたり、また京都で修業を終えた左官が地元に戻るなどによって、角柄の鏝が広まったと思います。(※4参照)


※4 東京の八王子市近辺でも、東京オリンピック前後まで、普通に角柄の左官鏝や羽子板型の鏝板(壁に塗る材料を乗せる板)が使われていたと古老の左官職の人は話しています。


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