本稿を閉じるに当たり、その後の近・現代の鋸歯の変遷を簡単に述べてみましょう。明治になり、樵職や杣師(そまし)が使う大型の「イバラ目」鋸に上目がヤスリで擦られたもの(「続・道具曼陀羅」昭和53年)や、明治時代の後半に山林用の土佐鋸にアメリカの鋸を模倣した改良歯(窓ノコ)が現れたり(村松貞次郎著「鍛冶の旅・わが懐しの鍛冶まんだら」昭和60年)、また昭和40年代に新潟からベニヤ挽き用の鋸歯が登場し、一時ベニヤ鋸として普及しましたが、その後は手で挽く鋸需要の著しい減少により、新しい鋸歯は誕生していません。
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